2012年10月27日土曜日

ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング レビュー

3DS 脳活性化ソフト 2012年7月28日発売

昔のことを言えば鬼が笑う

40日強プレイして、一通りトレーニングをオープンしてのレビューです。

スマートフォンやブラウザ上でのゲームの流行はかつてもっとも軽いゲーム体験だった携帯機でのゲームを、相対的に重いものにさせたように思います。
また少人数、短期間で開発され、安価で発売されて大ヒットするというサクセスストーリーの代名詞は2000年代中盤は前作「脳トレ」や「もっと脳トレ」が引き受けていましたが、現在そういったシンデレラはよそのプラットフォームで見出されることの多い時代になりました。

すっかり事情の変わってしまったこの2012年に、DSであまりに多くのフォロワーを生んで一時代を作った「脳トレ」がどんな装いで帰ってくるのか、あれこれ想像しながら迎えた発売日でした。
結果から話せばこの鬼トレ、前作のような軽いプレイスタイルではなく、むしろより豪華に、ボリュームを増やし、そしてより実用性を高める方向につまみを動かしてその存在を肯定させていました。任天堂熟語辞典で言えば「軽薄短小」から「重厚長大」側に寄ったと言えます。

本作のコンセプトは「ワーキングメモリーを鍛える」。現代人は多くの情報機器にかこまれ、同時あるいは短い交代間隔でそれらを処理する事が多くなるうち、何か一つの事をしながらもまた別の何かが気になってしまう「情報中毒」であると警鐘を鳴らしています(これって年末に控えているWiiUが肯定している現代社会像とコンフリクトしている気もしますが、そこは人としての柔軟性が問われるところです。動画の10分頃参照→http://www.nintendo.co.jp/wiiu/movie/index.html)。

情報中毒を克服すべく用意された本作のトレーニングは、ながら作業不可どころか、どっしり向き合っても非常に非常に難しい5分間の集中を要求される、ほんっとうに厳しいものでした。

たとえば、テレビコマーシャルでもフォーカスされていた代表的トレーニングの「鬼計算」。画面に連続で表示される計算式のn個前の回答を書き連ねていくという…覇王は初回プレイ時、3バックからしてもうこの夏一番のパニックでしたが、やがて超えられるようになるそれはたしかに達成感。成績に応じて自動で行われる難易度調整もあって、常に挑戦、常に本気の姿勢が問われます。
日々の仕事や勉強の効率アップのみならず、家事やスポーツまでも上達すると豪語する本作の効能は、そこまで同意していいものかはわかりませんが少なくともこの圧倒的難度を超えたらきっとなんかあるんじゃないか、あるはずだという思いは生まれます。

脳年齢という日常の話題として使いやすいキャッチーな評価軸を廃し、テレビコマーシャルという即座にその魅力を伝えるべき媒体で映すにはマニアックと思われる「鬼計算」がゲームの代表であるなど、タイトルロゴの下に「FOR SUPER PLAYERS」とプリントされていないことが不思議なほどの硬派な仕上がりです。

そのようなガチの鬼トレーニングを8本収録に加えて、鬼トレ補助9本、通常の脳トレ9本、さらにドクターマリオやワリオの森風のトレーニングなども収録し、教授のメッセージはフルボイスになっているなど、密度感のあるパッケージングになっています。
これが、任天堂の考える2012年の3800円に値するコンテンツということなんですね(フルボイスに関してはテンポが遅くなっていて個人的には好みではありませんが)。
ワリオの森をアレンジした「脂肪爆発」
逆に若干カジュアル化したのが出席のスタンプ。DS版では何か一つはトレーニングをしなければ押されなかったそれが、本作では起動しただけで押してくれます。出席日数が、新しいトレーニングのアンロック条件であることもその変更の理由でしょう。いわゆる実績システムにも似た「表彰状」の仕組みもあり、ゲームの起動と継続を促すための、ごほうびの頻度増と多様化は免れないところ(余談ですが同時期にプレイしていたXBLA「Spelunky」の数時間遊んで何一つ進展も獲得もない日が存在する潔さと好対照!)。
ソリティアDSi
ちなみに結局覇王がもっともプレイしたトレーニングは、トランプを使った「赤黒赤黒」「同色整列」「札番増減」。つまるところソリティアの類いですが、周囲からなんでわざわざDSで?と阿呆を見るような視線を受けながら私が遊んでいたDSiWare版「ソリティアDSi」を、画面構成や小粋な操作感などまるまる収録していますので、同様の好事家の方がいらっしゃいましたらちょっとオススメしておきます。