2014年4月15日火曜日

Monument Valley レビュー

iOS パズル 2014年4月3日配信

AN ILLUSORY ADVENTURE OF IMPOSSIBLE ARCHITECTURE AND FORGIVENESS

■滞らずに
『Monument Valley』はベッドランプの消え方にさえ細心の注意が払われたような、ムード満点の甘い夜だ。

立体空間の視差を利用したゲームには前例もあるが、個人的にはどれも購入には至らなかったり、途中でプレイを投げ出してしまっていた。それはコントローラーを握ってキャラを自由にアクションしたい「没入」と、総当たりアドベンチャーのようにさまざまなアングルを確認して動かなければいけない「俯瞰」とに、気持ちが行き来するのが面倒だったからだ。

『MonumentValley』が同じ轍を踏まなかったのは、タッチ操作のみ/一画面固定のゲームプレイで常に「俯瞰」側にギアを置いたまま遊べたこと、また後ろ髪を引かれるようなコレクト要素もなく、詰まっても2時間程度で爽やかに終わるボリュームや難易度など、快適さを損なわないことへの尽力ゆえだろう。


■モテるゲーム開発
"おしゃれは引き算"と言うが、『風ノ旅ビト(本作のアート・スタイルにおいてもっとも引き合いに出されるだろう)』をはじめ、『アウターワールド』から上田文人作品まで、ゲームを構成する要素を絞ることによって立ち上がって来る”カリスマ性"というものがある。

さてその選別を経て残った要素であるならば、各々がさぞや綺羅星の如く輝きを放つはずだが、本作に目を向けてみれば…淡い色彩、驚きのレベルデザイン、謎を解けば鳴る小気味の良い効果音、各ステージごとに必ず用意された新規ギミックやキャラクター、奥ゆかしいズームイン速度、破綻の無い翻訳、少々のユーモアも忘れない…そしてゲーム中いつでもスクリーンショットを撮る/トリムする機能の搭載=全ての瞬間がシャッターチャンスであると言う圧倒的な自信。

まるで、「モテるゲーム開発」というチェックリストを順に網羅して設計されたようだ。


■水嶋ヒロか!
知性と感性には嫌味さえ感じるほどだが、同時に危なげが無さ過ぎる/新鮮さには欠けると言った優等生のきらいもある。
しかし、君がもしプレイの短さと密度を美点に感じる忙しい大人であるならば、400円を支払って身を委ねる価値があるのは間違いない。